セルロースファイバーは夏にも強い?「夏デコス」3つの理由

夏の住まいの心地よさを考えるとき、断熱材の「熱伝導率」だけを見ればよいのでしょうか。


断熱材の熱伝導率は、建物の断熱性能を計算するうえで重要な物性値です。

しかし、夏の屋根や外壁は強い日射を受け、長時間にわたって高温になります。また、高温多湿な日本の夏では、温度だけでなく湿度も体感に大きく影響します。

そのため、夏の心地よさを考えるには、熱の通しにくさだけでなく、断熱材がどれだけ熱を蓄えられるか、温度変化が材料内部へどのように広がるか、湿気に対してどのような性質を持つかという視点も重要です。


セルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」には、こうした夏の住環境を考えるうえで重要な、容積比熱・温度拡散率・調湿性という特性があります。

そして、その素材の特性を活かすためには、適切な断熱厚さ、気密、透湿性、通気などを考えた設計・施工が欠かせません。

実際にデコスを採用した住宅では、住まい手から「デコスの家は何か違う」といった声をいただくことがあります。特に梅雨から夏にかけては、住まい手だけでなく、建築中の大工や電気、屋根工事などの職人からも、室内環境の違いについて声が寄せられます。


では、なぜデコスは「夏にも強い」と考えられるのでしょうか。

私たちは、その理由を「夏デコス」と呼び、次の3つの視点から考えています。


① 素材の持つ特性
② 素材を活かす設計・施工
③ 調湿性が支える夏の心地よさ


この3つから、「夏デコス」の理由を詳しく見ていきます。

①素材の持つ特性

19①素材の持つ特性
20調湿って何?

セルロースファイバーにはなぜ調湿性がある?


セルロースファイバーは、新聞紙を主原料とした木質繊維系の断熱材です。

木質繊維には、周囲の湿度変化に応じて水蒸気を吸ったり吐いたりする性質(吸放湿性)があります。

この性質によって、周囲の湿度変化をやわらげる方向に働きます。

これが、セルロースファイバーの「調湿性」です。

夏の住宅では、温度だけでなく湿度も体感に影響します。

そのため、夏の心地よさを考えるときには、熱の通しにくさだけでなく、湿気に対してどのような性質を持つ断熱材なのかという視点も重要です。

ただし、セルロースファイバーの調湿性だけで、室内の湿度や快適性が決まるわけではありません。

実際の室内環境は、建物の設計・施工、換気、空調、日射、生活による水蒸気の発生など、さまざまな条件によって変わります。

「セルロースファイバーに調湿性はある?日本の家には欠かせない調湿性」を詳しく見る


デコスファイバーには、この調湿性に加えて、夏の熱の伝わり方を考えるうえで重要な特性があります。

それが、「容積比熱」と「温度拡散率」です。

34容積比熱

セルロースファイバーはなぜ熱を蓄えられる? ― 容積比熱 ―


夏の暑さを考えるうえで重要な特性が、「容積比熱」、つまり熱を蓄える性質(蓄熱性)です。

熱伝導率が「熱の伝わりやすさ」を示すのに対し、容積比熱は「一定の体積にどれだけの熱を蓄えられるか」を示します。

夏の住宅では、強い日射によって屋根や外壁が長時間熱せられます。そのため、熱伝導率だけでなく、熱をどれだけ蓄えられるかという視点も、熱の伝わり方を考えるうえで重要です。


35容積比熱2


では、デコスファイバーと他の断熱材では、容積比熱にどのくらい違いがあるのでしょうか。

容積比熱の例として、デコスとGW16K、現場発泡ウレタンを比較してみました。

 

デコスの比熱は実測値、密度は現場での現実的な数値で計算しました。
GW16Kや現場発泡ウレタンは、IBEC公称値やメーカー公表値となります。


36容積比熱比較
37容積比熱比較2
38容積比熱比較②
39容積比熱比較②


デコスは、容積比熱=蓄熱性が高い。
いわば、「熱をためられる量が多い」
これが数値として具体的にわかりました。


Q:熱が入ったら冷めにくい?

温度拡散率

41温度拡散率=熱伝導率÷容積比熱


容積比熱がわかると、熱伝導率と組み合わせることで、「温度変化が材料の中を伝わる速さ」を示す温度拡散率を求めることができます。

温度拡散率は、

温度拡散率 = 熱伝導率 ÷ 容積比熱

で求められます。

温度拡散率が小さいほど、温度変化が材料内部へ比較的緩やかに広がることを示します。

夏の住宅では、屋根や外壁が日射によって高温になるため、熱伝導率だけでなく、温度変化がどのくらいの速さで室内側へ伝わるかという視点も重要です。


42温度拡散率
温度拡散率比較
温度拡散率比較②

この比較条件では、デコスファイバーはグラスウール16Kや現場発泡ウレタンより温度拡散率が小さく、温度変化が材料内部へ比較的緩やかに広がる結果となっています。

これは、デコスファイバーの容積比熱が大きく、熱を蓄える性質が温度拡散率にも反映されているためです。

セルロースファイバーは、施工密度を確保して充填する断熱材です。

木質繊維の特性と施工密度によって大きな容積比熱を持つことが、温度拡散率の小ささにもつながっています。


45温度拡散率比較イメージ

温度拡散率の違いをイメージすると

温度拡散率が小さい材料ほど、温度変化が材料内部へ緩やかに広がる性質があります。

夏、日射によって屋根や外壁の表面温度が上昇すると、その温度変化は時間とともに断熱材内部へ広がっていきます。

この比較では、セルロースファイバーはグラスウールや現場発泡ウレタンより温度拡散率が小さく、温度変化が材料内部へ比較的緩やかに広がることがわかります。

その違いをイメージすると、グラスウールや現場発泡ウレタンは「すーっと」、セルロースファイバーは「じわじわ」と温度変化が広がる、と表現できます。

46温度拡散率比較可視化実験

この温度拡散率を比較するため、可視化する実験を行いました。

 

木の箱にそれぞれ断熱材を入れ、裏から電気ストーブで同時に熱を加えます。
そして、表からサーモカメラで画像を撮ったものです。

 

この実験では、加熱後の表面温度の変化に断熱材による違いが見られました。セルロースファイバーは、比較した材料の中で表面側の温度変化が比較的緩やかに現れています。


② 素材を活かす設計・施工

48防湿層の省略
結露を防ぐための基本的な考え方

結露は、空気中の水蒸気が低温部分で露点温度以下になることで発生します。 
冬は一般に、室内の水蒸気圧が外気より高くなりやすく、室内から壁体内へ水蒸気が移動します。
そのため、壁体内に入った水蒸気が低温部分に滞留すると、内部結露の原因となることがあります。 

 壁体の基本的な考え方は、室内側から水蒸気が入りにくくし、外気側へ水蒸気を排出しやすくすることです。 
 一般的な繊維系断熱材では、室内側に防湿層を設け、室内から壁体内への水蒸気の侵入を抑えます。
また、外気側には透湿性の高い材料と通気層を設け、壁体内の湿気を外部へ排出しやすい構成とします。

デコスでは防湿層を省略できる? 
デコスファイバーは、木質繊維系セルロースファイバー断熱材で、木質繊維由来の調湿性を持っています。 
ただし、セルロースファイバーだから防湿層を必ず省略できるわけではありません。 
デコスでは、防湿層の省略が認められる条件を確認したうえで、物件ごとに壁体構成・地域条件などをもとに内部結露計算を行い、結露リスクを確認して防湿層の要否を判断しています。

防湿層を省略する場合には、 「セルロースファイバー+透湿抵抗の低い耐力面材+通気層」 など、壁体内の湿気を外部へ排出しやすい構成とすることが重要です。

セルロースファイバーの調湿性だけに頼るのではなく、調湿性・壁体構成・防湿・気密・通気・地域条件などを総合的に考えることが、内部結露リスクの低減につながります。


「セルロースファイバーは結露しない?」を詳しく見る

49夏デコス、屋根のメカニズム

夏デコス、屋根のメカニズム


夏の屋根は強い日射を受け、屋根面の温度が大きく上昇します。その熱は、時間とともに断熱層を通して小屋裏や室内側へ伝わっていきます。

デコスファイバーは、容積比熱が大きく、温度拡散率が小さいという特性があります。

そのため、日射による屋根面の温度変化が断熱材内部へ伝わるスピードを遅らせる方向に働きます。

また、セルロースファイバーには木質繊維由来の調湿性があり、周囲の湿度変化に応じて水蒸気を吸ったり吐いたりします。

こうした素材の特性に加えて、適切な断熱厚さを確保し、透湿性のある面材や通気層などを組み合わせることで、熱と湿気の両方を考慮した屋根構成とすることができます。


つまり、「夏に強い断熱材、デコス」は、熱伝導率だけで説明できるものではありません。

蓄熱性(容積比熱)・温度拡散率・調湿性という素材の特性と、それを活かす設計・施工を組み合わせることが、夏の小屋裏や室内の温熱環境改善につながります。


では、実際の屋根ではどのような違いが生じるのでしょうか。

デコスでは、屋根を想定したモデルを使って温度・湿度の変化を比較しました。

50屋根モデル簡易実験
51屋根モデル簡易実験2
52透湿性を活かす屋根のつくり方

透湿性を活かす屋根のつくり方


デコスファイバーの調湿性を活かすためには、断熱材だけでなく、屋根全体の構成を適切に設計することが重要です。

デコスでは、屋根の構成や使用する面材、地域の気象条件などをもとに、物件ごとに内部結露計算を行い、結露リスクを確認したうえで防湿層の要否を判断しています。

ここでは、非定常熱湿気同時移動解析ソフト「WUFI」を使い、次の3つの屋根構成についてシミュレーションを行いました。

① セルロースファイバー+防湿気密シートなし
② グラスウール+可変透湿シート
③ グラスウール+防湿気密シート

建築地は埼玉県熊谷市、屋根断熱厚さは240mmとして、それぞれの屋根構成における温度・湿度の変化を比較しています。

このシミュレーションでは、屋根構成によって夏季の壁体内の温湿度に違いが生じる結果となりました。

セルロースファイバーを使用した構成では、防湿気密シートを設けない場合でも、透湿抵抗の低い面材と組み合わせることで、壁体内の湿気を外部へ排出しやすい構成としています。

「透湿性を活かす屋根」を考える場合には、セルロースファイバーの調湿性だけでなく、透湿抵抗の低い面材や通気層を含めた屋根全体の構成が重要です。

このWUFIシミュレーションでは、野地板にMDFを使用しています。

次に実例として、通気耐力面材「アミパネル」を使用した建物での実測結果を紹介します。


※本結果は、記載した建築地・断熱厚さ・屋根構成等の条件によるシミュレーション結果です。

すべての建物で同じ結果になることを示すものではありません。
53【実例】透湿性を活かす屋根のつくり方
54【実例】透湿性を活かす屋根のつくり方2
55【実例】透湿性を活かす屋根のつくり方3
56【実例】透湿性を活かす屋根のつくり方4

この物件の実測結果では、屋根表面と小屋裏表面では41℃もの内外温度差となりました。


57【実例】透湿性を活かす屋根のつくり方5

デコスはセルロースファイバー断熱材=建材です。

この素材を生かすも殺すも、シェフである工務店の腕次第。

 

原理原則やルールに則って活かす設計・施工、ノウハウがあれば、心地よさが体感出来る家となります。
それが、住まい手の高い満足度とよい評価につながります。

③ 調湿性が支える夏の心地よさ

58③湿度の下がる心地よさ
59不快指数

人は、温度と湿度で快適なゾーンがだいたい決まっています。

それを数値化したものが「不快指数」になります。


60湿度による体感の違い

例えば夏、室温が28℃で同じでも、湿度が90%・60%・30%では、感じる蒸し暑さは異なります。

一般に湿度が高いと汗が蒸発しにくく、蒸し暑さを感じやすくなります。一方、湿度が低くなると汗が蒸発しやすくなり、同じ室温でも体感は変わります。

つまり、夏の心地よさを考えるうえでは、温度だけでなく湿度も重要な要素です。

室内の温度と湿度を適切に保つことが、蒸し暑さをやわらげ、心地よい室内環境につながります。

61湿度による体感の違い2

住まい手が感じる「空気の心地よさ」

デコスを採用された住まい手からは、夏の室内について、空気が「じめじめしていない」「さらさらしている」といった声が寄せられています。

セルロースファイバーには、木質繊維由来の調湿性があり、周囲の湿度変化に応じて水蒸気を吸ったり吐いたりします。

ただし、セルロースファイバーの調湿性だけで、室内の湿度や快適性が決まるわけではありません。

実際の室内環境は、断熱・気密、壁や屋根の構成、換気、空調、日射、生活による水蒸気の発生など、さまざまな条件によって変わります。

デコスでは、セルロースファイバーの調湿性を活かしながら、適切な断熱・気密・通気などを組み合わせることで、夏の蒸し暑さをやわらげ、心地よい室内環境をつくることを目指しています。

熊本木造応急仮設住宅での採用

63【エピソード】熊本木造応急仮設住宅
65【エピソード】熊本木造応急仮設住宅3
66くまもと型復興住宅モデル

【エピソード】熊本木造応急仮設住宅


2016年4月の熊本地震では、熊本県内に地元工務店による木造応急仮設住宅が建設され、190棟563戸にセルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」が採用されました。

採用のきっかけとなったのは、日頃からデコスを採用していた地元工務店からの働きかけでした。

熊本の厳しい夏を迎えるなか、施工現場や住まい手からは、夏の室内環境について好意的な声が寄せられました。

その後、復興支援の一環として建設された「くまもと復興住宅モデル」にもデコスが採用され、多くの方にセルロースファイバーの断熱性・調湿性・吸音性などを体感していただく機会となりました。

熊本での木造応急仮設住宅への採用は、デコスにとって、断熱材の性能を数値だけでなく、実際の住環境の中で知っていただく大きなきっかけとなりました。

「夏デコス」を体感できる、体感ハウス3.0

68体感ハウス3.0

デコス関東工場(埼玉県飯能市)には、セルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」の特長を実際に体感できる「体感ハウス3.0」を設置しています。

HEAT20・G2グレードの断熱性能を確保し、デコスファイバーを施工した建物で、夏の室内環境や吸音性などを実際に体感していただけます。

断熱材の性能は、数値だけでは伝わりにくい部分があります。

「夏デコス」の心地よさを、ぜひ実際の建物で体感してください。

⇒ 工場見学はこちら

夏デコス、結論

69夏デコス、結論

夏の心地よさは、断熱材の熱伝導率だけでは決まりません。

夏の強い日射を受ける屋根や外壁では、熱の通しにくさに加えて、熱を蓄える性質(容積比熱)温度変化が材料内部へ広がる速さ(温度拡散率)、そして湿度変化をやわらげる調湿性も重要な視点です。

セルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」は、こうした素材の特性を持っています。

そして、その特性を活かすには、適切な断熱厚さ、気密、透湿性、通気など、建物全体で考えた設計と確かな施工が欠かせません。

素材の特性と、それを活かす設計・施工。
その両方から、夏の心地よい住環境を考える。

それが、私たちの考える「夏デコス」です。

70私たちは断熱材ではなく、心地よさをつくっているのです

よくある質問

Q:セルロースファイバーはなぜ夏に強い?
A:セルロースファイバーは、熱伝導率だけでなく、容積比熱・温度拡散率・調湿性といった特性を持つ断熱材です。

容積比熱が大きく、温度拡散率が小さいため、日射による屋根や外壁の温度変化が材料内部へ比較的緩やかに広がります。また、木質繊維由来の調湿性があり、周囲の湿度変化に応じて水蒸気を吸放出します。

これらの素材特性を、適切な断熱厚さや通気層などの設計・施工と組み合わせることが、夏の温熱環境を考えるうえで重要です。


Q:熱伝導率だけでは夏の性能はわからない?
A:熱伝導率だけでは、断熱材の夏の熱的な特性をすべて評価することはできません。

熱伝導率は「熱の流れやすさ」を示す重要な指標ですが、夏の暑さを考える場合には、熱をどれだけ蓄えられるかを示す「容積比熱」や、温度変化が材料内部へ広がる速さを示す「温度拡散率」も重要な指標になります。

ただし、実際の室温や快適性は、断熱材だけでなく、日射遮蔽、換気、空調、建物構成、施工などにも左右されます。


Q:容積比熱とは?
A:容積比熱とは、一定の体積の材料がどれだけの熱を蓄えられるかを示す物性値です。

「密度×比熱」で求められ、数値が大きいほど、同じ体積で多くの熱を蓄えることができます。

セルロースファイバーは施工密度が高く、容積比熱が大きいことが、夏の熱の伝わり方を考えるうえで特徴のひとつとなります。


Q:温度拡散率とは?
A:温度拡散率とは、温度変化が材料内部へ広がる速さを示す物性値です。

「熱伝導率÷容積比熱」で求められ、数値が小さいほど、温度変化が材料内部へ比較的緩やかに広がります。

そのため、夏の屋根や外壁では、熱伝導率だけでなく温度拡散率も、断熱材の熱的特性を考えるための重要な指標です。


Q:セルロースファイバーは夏型結露を防げる?
A:セルロースファイバーを使えば、必ず夏型結露を防げるということではありません。

セルロースファイバーには木質繊維由来の調湿性がありますが、結露リスクは断熱材だけでなく、防湿・気密、面材の透湿抵抗、通気層、地域の気象条件、冷房条件などによって変わります。

デコスでは、壁体構成や地域条件などをもとに内部結露計算を行い、結露リスクを確認しています。


Q:セルロースファイバーなら防湿層は不要?
A:セルロースファイバーだからといって、防湿層を必ず省略できるわけではありません。

デコスでは、防湿層の省略が認められる条件を確認したうえで、物件ごとに壁体構成や地域条件などをもとに内部結露計算を行い、防湿層の要否を判断しています。

防湿層を省略する場合も、セルロースファイバーの調湿性だけに頼るのではなく、透湿抵抗の低い面材や通気層などを含めた壁体・屋根全体の構成を適切に設計することが重要です。

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